月別アーカイブ: 2013年10月

柚子味噌。

写真のお料理は「鱈(タラ)の白子の柚子釜焼き」です。

他府県ではどうなのか知らないのですが、京都では鱈の白子のことをその色と形が雲のようなことから「雲子(くもこ)」と呼びます。全国的にそうですか?

このお料理はくり抜いた柚子の中に銀杏、百合根、しめじを裂いたものと共に、新鮮な雲子(白子)をたっぷりと盛り込み、そこに当店自慢の柚子味噌を覆い被せるように流し入れてオーブンで香ばしく焼き上げた一品です。雲子(白子)の濃厚な旨味と共に柚子の香りをふんだんに楽しんでいただこうという趣向です。

味噌の上に乗っているのは「松の実」です。松の実は和菓子などにも良く使われます。「松風(まつかぜ)」などが有名ですね。

話は戻りますが、このお料理は、柚子の釜と味噌が雲子(白子)を閉じ込めて蒸し焼きの状態で調理されるため、その旨味と風味を逃しません。食べやすいようにスプーンも添えていますが、箸を入れると中には雲子(白子)から出た美味汁が溢れ、香ばしく焼けた味噌と共に絶妙に絡み合います。熱々を一口、ホクホクと頬張ると、柚子の香りが口の中にいっきに広がり、ほのかに鼻から抜けていきます。「あぁ~heart02.gif日本に生まれて良かった・・・kao-a06.gif」と思えるお料理の一つだと思います。

この季節ならではの「秋」を満喫できる一品です。

そんなお料理の決め手になっているのはこの「柚子味噌」

京都の白味噌(西京味噌)に、「これでもかっ!!」と言うくらいのたっぷりの卵黄を混ぜ込み、またまた「これでもかっ!!」と言うくらいのたっぷりのお酒を注ぎ込んでじっくりと二枚鍋で練りこんでいきます。(勿論、もとになる味噌選びはとても重要です。過去に色んな西京味噌を用いて試しましたが、味噌の良し悪しで全く変わってしまいます。)

途中何度か調味しながら気長にじっくりと時間をかけて練りこみます。焦ってはダメです。

味噌に艶が出て、濃厚な旨味が熟成されるまで、色んな旨味が一つにまとまって、味に深みが充分出るまで練り続けます。

こうして出来上がったのが「玉味噌」

その玉味噌に柚子の皮の摩り下ろしたものをふんだんに混ぜ込み、「当店自慢の柚子味噌」となるわけです。

西京味噌で最強味噌の出来上がり!!ってわけですkao07.gif

是非、一度ご賞味下さい。

 

・・・・・あいも変わらず「手前味噌」なお話で失礼しました!kao09.giff01.giff01.gif

 

 

 

 

煮凝り。

前回は「焚き合わせ」を紹介させていただきましたので、同じく「焚き合わせ」繋がりで、今回はこのお料理の写真をアップしました。

秋茄子と穴子、車海老の煮凝り(にこごり)です。中身は煮穴子、車海老、焼き茄子、小芋、紅葉を模った冬瓜、オクラです。冬瓜と小口に切ったオクラは、まだ色付かない紅葉の葉に見立てつつも、お料理全体ではこれから深まっていく「秋の実り」をイメージしました。

胡麻の羽二重を鞍掛けにし、イクラ針セロリを天盛りにしています。

この「煮凝り(にこごり)」は冷たいお料理ですから、たいがいは「夏のお料理」です。しかし、今年は夏のような気候が長く続き、ついこの前まで、暦の上では「秋」なのに「行き交う人たちはみな夏服」という状態でしたので、そのような日にはあえてこのようなお料理をお出ししました。

器はガラスの蓋物ですが、葡萄が描かれています。

夏への名残りと、深まっていく秋との端境期。そんなお料理です。

 

 

「煮凝り」について・・・

煮凝りとは本来、魚などの煮汁を冷やして固まらせた食べ物です。ですが、私は上で紹介したようなお料理の場合、魚の煮汁をさらに出汁でのばし程よい味に調味した後にゼラチンで補います。ですから「ゼリー寄せ」と呼ぶほうが適切なのかもしれませんが、「煮凝り」という言葉が指す意味を「魚などの持つゼラチン質によって煮汁などの液体を凝固させた食べ物」と考えれば、スイーツのゼリーだって「煮凝り」と呼んでもおかしくないと思います。

屁理屈のように聞こえるかも知れませんが、時代と共にカタカナで表記するような言葉が増え、そのカタカナの単語を一般的に使うようになる前にどんな日本語で表現していたかと、ふと考えると分からない(出てこない)時が多々あります。言葉が時代と共に変化するのは当然のことなのでそれに関して意を唱えるつもりはないのですが、料理名はやはり「ゼリー」ではなく「煮凝り」っていう本来の日本語にこだわりたいと思っています。kao06.gif

 

「出汁」はお母さん・・・

日本料理は出汁が決めて!なんて言葉をコマーシャルなどで聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。「お吸い物」なんかは勿論ですが、煮炊き物もどれだけ最高の素材を使っても「出汁」が不味いと台無しです。素材が子どもだとすると出汁はお母さんです。子ども(素材)を優しく包み込み、その良いところを最大限に伸ばす。美味しい「出汁」にはそんな力があり、また逆にそんな「出汁」が本当に美味しい「出汁」だと思います。

先ほどの「煮凝り」のお料理も中の具材を出汁が優しく包み込み、それぞれの持ち味を引き出しつつもお互いがぶつかり合うことなく口の中で様々な表情を見せてくれます。色々な子どもたちの個性をお母さんが優しく包み込み、みんな笑顔で口の中で幸せそうな表情を浮かべるのです。

「 自画自賛もたいがいにしろ!! 」とお叱りを受けるかも知れませんが、自分で作っておきながらその美味しさに感動しました。kao13.gifkira01.gif

決め手は「出汁」(お母さん)と作り手の私(お父さん)の絶妙な味付けってところでしょうか?kao07.gifheart02.gif

「 ええかげんにせえっ!!」と叱られる前に、今日はこの辺で失礼いたします・・・

 

 

 

 

 

京かぶら。

焚き合わせ 京蕪の煮物です。

蕪(かぶら)という素材もこの時期の定番ですが、絹のようにきめ細やかなその上品な口ざわりと、ほのかな甘味、それに特有の香りが特徴です。(色白で上品な素材ですから、私は「かぶら美人」と呼んでいますが、)それを損なわないような調理に細心の注意を払います。ただ、その点に気をつけて大切に調理してあげれば様々な形に変化して色々な料理で楽しむことができる大変魅力的なお野菜です。

蕪蒸しがその代表ですが、お漬物も美味しいですね。

(わが家の夕食ではサラダとしても活躍してくれています。)

このように幅広い料理で活躍してくれる食材は料理人にとっては心強い助っ人です。「今度は蕪ちゃんにどのように活躍してもらおうか・・・」と思いながら献立を考えるとわくわくします。

話は変わりますが、信州で有名な野沢菜(のざわな)は、もとをただせば京都の蕪(かぶら)だそうです。たしか江戸時代だったと思うのですが、京都の蕪を信州の方でも栽培したいと苗を取り寄せて試みたところ、気候などの違いから蕪(カブ)の部分は育たず、茎と葉がよく育ち、それが今の野沢菜の元になったそうです。

お野菜ひとつとっても様々なルーツがあり、調べてみると面白いでしょうね。興味のある方は是非調べてみて下さい。

 

さて、写真のお料理は、菊を見立てた蕪の中に蟹(かに)の身を射込み、蕪を炊いた煮汁を吉野餡にして山葵を添えています。

出汁の香りと旨味の中に、蕪の香りと旨味が混ざり合い、お口の中に広がります。

手前は鱧(はも)で松茸(まつたけ)を巻いて炊いたものです。

・・・菊の香りと共にお楽しみ下さい。

お魚の紹介。

前回、魳(かます)で松茸を包んで柚庵焼きにしたお料理を紹介いたしましたが、この魚が魳(かます)です。

最近、スーパーなどで魚は切り身の状態でパックに入れて店頭に並んでいることが多いため、魚そのものの姿をご存知ない方が以外と多いので、一応アップしました♪

( でも、この魚は切り身にせずに開いて売ってますから皆さんご存知ですね・・・kao29.gif )

昔は何処の家庭の食卓にも並んだ大衆魚ですが、最近は値も上がってすっかり高級魚の仲間入りです。

脂が乗ってお腹はまんまるの円筒形ですheart02.gifかっちりと肥えていて美味そうですheart02.gif

 

 

お気に入り。

 

今日はお造りと焼き物を紹介させて頂きます。

まずはお造り。

鯛、鮪、烏賊、生雲丹、車海老の五種を可愛らしく吹き寄せ盛りに・・・。

器は仁清の写しです。

 

これは焼き物です。

脂の乗った魳(かます)を柚庵焼きにしたものですが、松茸を包み込んで焼いています。写真で見ると松茸がわかり辛いのが残念です。(写真を撮るのって本当に難しいですねkao19.gif

器は乾山の写しです。

 

さて、今日は献立の流れに関係なくこの二品を紹介させて頂きましたが、何故かと言うと、器がお気に入りの器だからです。

皆様ご存知のように、仁清(野々村 仁清)乾山(尾形 乾山)共に京焼を代表する江戸時代の陶芸作家ですが、そのデザインは全く風化しないというか・・・常に時代の最先端を行ってるというか・・・言葉で上手く言えませんが、やはりスゴイ!の一言です。世代に関係なく、今の若い子達が見ても誰もが「可愛いkao-a02.gifheart02.gif」と言います。可愛いと言う表現が適切かどうかは問題ではありません。誰が見ても魅力的だということでしょう。やはりスゴイ!

また、乾山が本格的に陶芸を学んだのが仁清からであり、乾山の兄が「尾形 光琳」、何という凄い繋がりでしょうか!乾山の器に光琳が絵付けをしたり・・・と、今の言い方だと兄弟のコラボ作も有名ですが、本当に才能に溢れた凄い兄弟ですね!!

今、世界では日本の「かわいい」がブームですが、「尾形 光琳」は「日本的かわいらしさの美学を強く打ち出した作家である」と言われています。日本の歴史ある文化、感性はひょっとしたら日本人のDNAに受け継がれ、今の若者のサブカルチャーにも何らかの影響を与えているのかも知れませんね。(考えすぎでしょうか?・・・kao-a20.gif

さて、仁清写しの器は写真の紅葉絵の器しか持っていませんが、大好きな器なのでこの時期には必ず使います。紅葉の赤がとても鮮やかでその構図も大胆ではありますがとても上品で華やかで大好きです。当店には眺められるような庭もございませんし、墨染の町には季節を感じられるような景色もございませんが、せめてこの器で秋を感じていただけたら・・・と言う思いです。私はこの器を眺めているだけで心が秋の山々にトリップしてしまいます。

乾山は特に好きなので写しを何点か持っていますが、この菊絵の器はその中でも特に好きな器の一つです。大好きなので多少強引にも使ってしまいます。本来は向附けですが、何にでも使ってしまいます。多少合っていなくてもいいんです。偉大な乾山に甘える気持ちです。kao-a06.gif

仁清(野々村 仁清)、乾山(尾形 乾山)共に、本物の作品は残念ながら写真でしか観たことがないのですが、「写しでこれだと本物を見たら・・・」と考えたら興奮してしまいます。なんとか時間を作って美術館に足を運びたいものです。

「芸術の秋」ですからね。

「食欲の秋」は何とぞ当店にお願い致します。kao07.gifkira01.gif

 

・・・と言うことで、今回は当店のお気に入りの秋の器を紹介させていただきました。

ありがとうございます。

 

土瓶蒸し

土瓶蒸しです。

写真がなかなか上手く取れなくて残念です。松茸には色々な食し方がありますが、やはりその代表と言えば土瓶蒸し、私も非常に好きな料理の一つです。

そもそも、なぜ土瓶を使うのか?詳しくは知らないのですが、農夫が山里で採った物を調理して食そうとした際に鍋が無いことに気付き、土瓶を代用したことが始まりだと聞いたことがあります。そう言えば、「すき焼き」の鋤(すき)も農具が由来となっていますね。まあ、いづれも諸説があるようですが、前回ご紹介しました前菜の器も「箕(み)」をかたどってあります。このように秋の器は山里を思い浮かべるようなものが沢山ありますね。

さて、料理の世界には「出会い物」と言う言葉がありますが、土瓶蒸しの鱧(はも)と松茸はまさに「出会い物」、お互いがお互いの旨味を相乗効果で引き出してくれます。鱧の上品な脂と旨味が松茸の香りと共に絶妙なハーモニーを奏でてくれます。

しかし、土瓶蒸しの魅力はそれだけではありません。土瓶蒸しの醍醐味はなんと言ってもその出汁です。鱧も松茸も生の状態で土瓶の中に入れて出汁の中で蒸し煮込みのような調理となるため、すべての旨味が出汁の中に溢れます。とても上品で繊細かつ濃厚なスープです。昆布、鰹節、鱧、松茸、すべての旨味や香りがとけ合います。今、その風味を思い出しつつもこうして文章を書いていると、改めて日本の食文化に敬慕の念を抱きます。

 

いきなり話はそれますが、私ども夫婦の結婚披露宴の際、料理界の先輩から主賓の挨拶で結婚をこの「出会い物」に例えての祝辞を頂戴したことを思い出します。

(さて、そのような夫婦に成れているでしょうか・・・?kao07.gif

 

いつまでも、土瓶蒸しのような温かい家庭でありたいと思います。

 

 

ブログ開設。お料理も少し解説です。

毎度ご贔屓にして頂き、誠にありがとうございます。

七年前に開設いたしましたホームページですが、なかなか更新することもできず、お客様に何の情報も提供できないままになっておりましたが、この度、新たにブログページを開設いたしました。

これからはこのページで当店のお料理や様々な情報を発信していきたいと考えております。

日ごろより「うを友」を可愛がって下さっているお客様はもとより、初めてこのホームページに来て下さったお客様にも興味を持って頂き、またご来店頂ける機会につながれば・・・と、図々しくも考えております。さて、はたしてそのような魅力のあるホームページにしていけるか?という若干の不安はございますが、ご来店頂けるお客様あっての料理店、ご賞味して下さるお客様あっての料理人であります。どうか1人でも多くのお客様に興味を持って頂き、ご来店に繋がるよう、料理は勿論のことながら、このページの作成にも精進致しますので、どうか宜しくお願い申し上げます。

さて、写真のお料理について少しばかりお話させていただきます。

写真のお料理は懐石のコースの中で前菜として出させて頂いているものです。お料理はお客様のご予算やその日の仕入れ(素材)の状況によってその都度吟味して献立を立てますので、あくまでも一例であり、今はこの料理を必ずお出しするというものではありませんが、当店のお料理を雰囲気だけでも伝われば・・・と思います。

 

写真は、前菜 秋の吹き寄せ です。

塗りの箕(み)に栗と柿の葉を敷き、一口大のお料理を盛り込んでいます。

(箕(み)っていうのは、穀物をふるい、殻を取る農具です。皆さん名前はピンとこなくとも、物はご存知でしょう。)

まずは秋の代表、秋刀魚のお寿司です。皮目はあぶって香ばしく仕上げています。赤が鮮やかな酢取り茗荷をあしらい、酢橘の薄切りを添えています。酢橘はちょっと添えているだけですが、それでも充分にほのかな酸味と香りが移り、秋を感じていただけると思います。

子持ち鮎の山椒煮、何時間も何時間も煮て骨を全く感じない柔らかさに仕上げています。甘辛く煮ていますが、くどいような甘辛さでは無く、軽やかな風味を感じて頂ける味だと思っています。しっかりと締まっているようでいて、口の中ではほろりとくずれる。そんなお料理です。

他には栗の甘露煮八幡巻三度豆のサーモン巻帆立の幽庵焼き小鯛の黄味寿司車海老のキャビア射込み雲丹の利休焼き、なんかを盛り込んでいます。余談になりますが雲丹は「海栗」とも表記するようです。海の栗、たしかに見た目は毬栗とよく似ていますね。因みに、この雲丹の利休焼きは魚のすり身と卵を摺り混ぜて調味した物の中に雲丹をたっぷり混ぜ込み、その上にたっぷりの胡麻を振りかけて厚焼き状に焼いたものです。

後、写真ではちょっと分かりづらいと思うのですが器の中央下部にある黒い品は京都の小茄子の煮たものです。茄子の中央に切り込みを入れ、そこに鰊(にしん)を挟んで鰊茄子に仕上げています。振り柚子をして香りと共にさっぱりとした味わいを楽しんで頂けると思います。

最後になりましたが器上部の猪口には甘海老と飛び子の和え物です。

ちょっと涼しくなって来ましたが、秋だと言うのに天候によってはまだまだ暑かったりと、昼と朝晩の寒暖差が激しく、なかなか体調も整いません。皆様、くれぐれもお身体にはお気を付け下さいませ。

この日は暑かったので、お料理があまり暑苦しいものにならないように猪口はガラス器にしました。

以上がお料理のお話です。

 

最初なんで張り切って書いているとすごく長文になってしまいましたkao-a20.gif。最後まで読んで下さった方はお疲れになったのではないでしょうか?申し訳ございません。kao-a10.gif

これに懲りずに、今後とも宜しくお願い申し上げます。