カテゴリー別アーカイブ: 季節のお料理

『お月見』のお話し…

いよいよ「お月見」が近づいてまいりました。

 

当店では、『 酒器取りて 共に夜を待つ 月見草(萩)… 』という俳句と共に、9月は『名月』というタイトルで御献立をご用意しております。

(俳句は初めての挑戦ですので出来の悪さはお許し下さい…笑。)

 

さて、今日は「お月見」について少し勉強したことをご紹介いたします。

 

お月見と言えば「十五夜」「中秋の名月」などと申します。

 

皆様ご存知のように、「十五夜」とは満月のこと、年の内に12、3回めぐってきます。この「十五夜」の中でも、1年の中で最も空が澄み渡り、月が明るく美しいとされていたのが「中秋」です。

「中秋」は「旧暦の八月十五日」にあたります。旧暦は月の満ち欠けで暦を作っているため、旧暦で「秋」とされるちょうど真ん中の「中秋」がちょうど満月になるようです。これを現代の暦に置き換えると旧暦とのずれが生じてくるためにその年によって日が変わってくるわけです。『今年は9月27日が中秋』になります。

 

また、「中秋」「仲秋」と2種類ありますが、「仲秋」はまた少し意味合いが違うようです。

「中秋の名月」・・・旧暦八月の「十五夜」の月(満月)

「仲秋の名月」・・・旧暦八月の月(満月に限らず)

…と、言うことだそうです。

祭事の「お月見」の場合、発音は同じですが「中秋の名月」と表記するのが正しいわけですね。

 

さて、もともと「月見の祭事」は奈良時代から平安時代に中国から伝わったそうです。

しかし、そのルーツははっきりせず、月見の風習そのものは縄文時代からすでにあったとも言われています。

ただ、「祭事」として中国から伝わった後、平安貴族の間で「観月の宴」や「舟遊び」が盛んになりました。

「観月」とは、満月を眺めて楽しむこと。(伏見に「観月橋」という地名がございますが、これも橋から見える月が美しいことから付いた名前です。)

ただ、平安貴族は月を直接見ることをせず、舟から水面に揺れる月を楽しんだり、酒杯に映る月を楽しんだりしたそうです。

 

ちょうど前菜の中の一品に生雲丹を添えた満月豆腐(卵豆腐)がございますが、これを表現したものです。

夜空に浮かぶ月を表現したく、酒杯は背の高いワイングラスにいたしましたが、覗いていただくと中に月が浮かんでいるという趣向です。

 

さて、話がそれましたが、そんな平安貴族の「観月の宴」が時代と共に姿を変え、ちょうど農作物の収穫の時期であることからも江戸時代ころからは元々あった収穫祭のようなものと融合していったようです。

 

現代でも、月が見える場所などに、薄(すすき)や萩(はぎ)を飾り、月見団子、里芋、枝豆、栗などを盛り、御酒を供えてお月見をします。また、この時期に収穫されたばかりの里芋を供えることから十五夜の月を「芋名月」とも言います。

薄(すすき)は、稲穂に似ていることから、お米の収穫を願って飾られます。

当店の前菜にも添えましたが、萩(はぎ)は「神様のお箸」を意味するそうです。

(また話がそれますが、「祝い箸」などの両端が使えるお箸も、片方の端は自分が食べる用で、もう一方は神様が召し上がるための物です。食物に感謝して神様と共にいただくと言う意味合いでしょう。)

 

このように、中国から伝わった「月見の祭事」に日本人の「月を眺め、愛でる習慣」や、「夜を照らしてくれる月明かりへの感謝」「農作物の豊作祈願と収穫の感謝」などが合わさって現代の「お月見」になったようです。

 

また、お月見には「中秋」の十五夜だけでなく「後の月」というものがあります。「十三夜」とか「栗名月」とも呼ばれますが、旧暦の九月十三日がそれにあたります。現代の暦で今年は「10月25日」になります。

「十五夜」と「十三夜」両方の月見をするのが良いと言われていますが、「十三夜」の風習は日本独自のものだそうです。

 

「お月見」について…詳しく調べればまだまだ御座いますが、随分長くなりましたのでこの辺で…。

 

近頃は縁側のある家も少なくなり、私の感じる限りでも3~40年前とはお月見の風習も随分と薄れてきているように思いますが、どんなに慌しい生活の中でも、「月を眺め、愛でる習慣」、その豊かな心は大切にしていきたいものです。

 

 

『 藤森神社【 藤森祭 】』

新緑が美しい季節♪

さて、いよいよゴールデンウィークですが、5月の1日から5日は私共の氏神様「藤森神社」の祭り『 藤森祭 』でもございます。

様々な祭典が催されますが、中でも5日の『神輿巡行』『駈馬神事』は特に盛り上がります。

『神輿巡行』ですが、その『神輿』は江戸時代の氏子民が財力を注ぎ込んで造ったもので、京都において最も優雅と称されるもので美術品としての価値も高く、大変立派なものです。
かなり大きく重量もそうとうなものですが、力自慢の男衆が「ヨーサ!ヨーサ!」と担ぐ様はとても力強く、 男の子の成長を願う「端午の節句」のぴったりです。

また、『駈馬神事』ですが、『藤森神社』のホームページから調べましたところ、古来、早良親王が781年の陸奥の反乱に対し、征討将軍の勅を受けて藤森神社に祈誓出陣された際の擬勢を象ったものだそうです。
室町時代には御門府出仕武官により、江戸時代には伏見奉行所の衛士警護の武士や、各藩の馬術指南役、また町衆らが様々な馬上の技を競い合ったそうです。
また、行事の形としては早馬の影響ではなく、江戸の中期に大陸系の曲乗り的な馬術の影響を受けたものと考えられるそうです。
1200年も前からの大変歴史ある行事ゆえ、京都市登録の「無形民俗財」に指定されております。

『駈馬神事』の様子は毎年、テレビのニュースでも取り上げられますが、残念ながらその様子を見たことの無い方の中には「流鏑馬(やぶさめ)」と同じように思われている方も大勢おられます。
流鏑馬とはまったく違った迫力の 『駈馬神事』、是非生でご覧になっていただきたいと思います。

京都は有名な寺社仏閣が多くございますが、観光の方々の目先はどうしても上(北)の方に偏ってしまいがち、『伏見』と言えば「稲荷大社」だけがダントツの観光スポットになっていますが、実は地味で目立ち難いだけで、歴史的な価値のあるマニアックな名所『伏見にいっぱい』ございます。
…と、申しましても、残念ながら私は全く詳しくないので皆様にご紹介するには役不足ですが、歴史に詳しい方や興味のある方は、このゴールデンウィーク大型連休を機会に是非伏見にも目を向けて下さいね。

では、素晴らしい休日をお過ごしください♪

http://www.uwotomo.co.jp/

四季の彩り

本日、御注文戴いたお持ち帰り用の御弁当です。

御料理を通じて四季の喜びと彩りを感じられる日本の文化に改めて感謝します。

桜餅の葉っぱ。食べる派ですか?食べない派ですか?

まだ寒さが残りますが、随分と春らしい気候になってまいりました♪hana-ani01.gif

さて、今回のお写真は『穴子の桜蒸し』でございます。heart05.gif

『桜蒸し』にも色々なバリエーションがございますが、今回は百合根や銀杏を道明寺で包み込み、脂の乗った穴子と共に桜の葉で包んで蒸し上げました。

『桜蒸し』と言えば、桜の香りと共に春を感じ楽しんで頂く趣向のお料理ですが、もちろんこれは和菓子の『桜餅』に見立てたもの…

で、その『桜餅』で必ずと言っていいほど議論になるのが『葉っぱを食べるか?』『食べないか?』ということです!(笑)te03.gifkao16.gifbikkuri04.gif

これは言うなれば好みの問題で、どちらが正解ということは無いのだと思いますが、多いのは『食べる派』のようですね。

調べてみたのですが、和菓子職人さんの間でもやはり意見は二つに分かれるようです。kao-a20.gif

「桜の葉の香りと塩味があり、それを共に食していただいてこその桜餅であり、葉っぱが無ければ道明寺饅頭だ。」と言う意見。
はたまた、「ただ香りを付けるための意味と乾燥を防ぐためのもので、言うなれば春の演出的なもの。食していただく必要は無い。」と言う意見。
作り手の思いも様々あるようです。bikkuri01.gif

「桜の葉の香りの成分であるクマリンが食品添加物として認められていないので食べない方がいい。」という意見もあります。
確かに、この「クマリン」という成分は肝毒とされていますが、よほど大量に食べない限りは問題ないようなので、一日に数個を毎日食べたところでなんともないようです。
桜餅の他に、アイスやクッキーにも刻んだ桜の葉を混ぜて使用するようですからね♪
ただ、あまり消化も良くないので食べすぎには注意ですが、それは『桜餅』に限ったことではありませんね♪(笑)kao07.gif

さて、ここまでお話したところで、私はいったいどちらの派閥かと申しますと、絶対的な『食べる派』であります!kira01.gif

その理由は『桜の葉の塩漬け』そのものにあるのですが、この『桜の葉の塩漬け』の原料となる桜の葉は『大島桜(オオシマザクラ)』という種類で、桜の葉なら何でも良いと言う訳ではありません。この『大島桜』は葉が薄くて柔らかく、また葉の裏側の産毛が無いのが特徴で、要するに『食用』として適している訳です。te03.gif

その生産地も全国の中で「静岡県の松崎町付近」に限られています。
生産量は松崎町が全国シェアーの70%を占め、あとの30%も南伊豆町、つまりこの地域でしか生産されていません。

松崎付近(東経138度47分、北緯34度45分辺り)で取れる桜葉には香りの成分であるクマリンが多く含まれており、それ以外のものではあの色と香りは出せないと言われているそうです。 bikkuri01.gif

そのようなことも踏まえた上で、私は絶対的に『食べる派!!』なのですが、きっと松崎町や南伊豆町の生産者の皆さんの中でも意見が割れるんでしょうね♪(笑)kao07.gifkira01.gif

 

さぁ♪

『桜餅』を囲みながら…

はたまた当店の『桜蒸し』を囲みながら…

ならではのこの話題で今年も議論に花を咲かせていただきたいと思います♪

ただし、熱くなり過ぎずに「葉っ葉っ葉っ…」と和やかに♪(笑)heart05.gif

春の季語『三宝柑』

先日FBで紹介させていただきました『三宝柑』、春の訪れを感じる果物で、その名前は「春の季語」としても用いられるほどです。hana-ani04.gif

和歌山県の湯浅町栖原地区で主に生産され、果汁が多く爽やかな甘さが特徴的な果物です♪

そもそも、なぜに『三宝柑』という名前が付いたのか?
ずっと気になっていたので調べてみました!enpitu.gif

簡単にご紹介しますと…

江戸時代(文政年間)。
和歌山藩の「野中為之助」という 藩士の邸内にその原木があり、非常に珍しい果物であったことから藩主の「徳川治宝公」に献上したそうです。
その際に「三方(さんぼう)」に乗せて献上したことが名前の由来とされていますが、「徳川治宝公」はこれを『三宝柑』と 名付けて、藩外移出禁止を命じ、一般人の栽培を一切許可しなかったそうです。kao16.gifbikkuri04.gif

さて、そんな『三宝柑』ですが、果皮が柔らかい上に肉厚で中身が取り出しやすいことと、名前の縁起良さ、また何よりも季節を感じさせてくれることから料理屋では『三宝柑釜』として器代りに使用することが多く、和え物や酢の物、時には御寿司なんかを盛り込んでお出しすることが多い果物です。te03.gif

取り出した果肉は、とても美味しいのですが種が多いのが難点。kao05.gif
私どもがお客様にお出しするには、そのままではちょっと 扱いにくいので「ゼリー」にしたり、「シャーベット」にしたりすることが多いです。heart05.gif
今回はお写真がありませんが、果肉を一緒に混ぜ込んで、果汁を使った合わせ酢と共に「酢の物」として使用することも御座います。kira01.gif

下のお写真はお雛様の時に「お寿司」を盛り込んだものです。

また、一番上は「御水物」(デザート)のお写真です。

今回は果汁を使って柔らかなムースにしました。
しかし、かなりあっさりと仕上げていますのでムースと呼んでいいものか…?kao-a20.gif

果肉も共に流し入れ、リキュールで少し香りを加えて「柔らか~いゼリー」と「柔らか~いムース」の間の子のような食感に仕上げています♪heart06.gifosake02.gif

上にはフルーツを飾り、バニラアイスを添えました。

「可愛いね♪」と女性のお客様にも喜んでいただけたら幸いです♪kya-.gif

三宝柑には上から濡らした透かし紙を掛けてみました。

桜の時期になると、京都では『花灯篭』が有名ですが、灯篭の和紙の奥に揺らめくほのかで柔らかな光のような奥ゆかしさを演出したつもりです。sakura.gif

これでお客様に『花灯篭』をイメージしていただくにはかなり無理がありますが…

 

まぁ、種の多い果物だけに、「何でこんなん掛けてあるねんやろぅ?」と話の種になれば…♪(笑)kao07.gifheart02.gif

 

 

 

『節分です♪♪』

『鬼は外!福は内 ♪♪』hana-ani01.gif

今日は『節分』。

皆様ご存知のように「節分」とは本来、「季節を分ける」つまり季節が移り変わる節日をいい、「立春」「立夏」「立秋」「立冬」それぞれの前日を指すものですが、その中でも「立春」は一年の始まりとして考えられ特に尊ばれたために、いつしか「節分」と言えば「春の節分」のみを指すようになっていったそうです。enpitu02.gif

昔は「立春」を一年の始まりと考えられていたために、その前日の「節分」は今の「大晦日」にあたります。平安時代の宮中では陰陽師らによって旧年の厄や災難を祓い清める「追儺(ついな)」という行事が行なわれ、これが室町時代以降は「豆」を撒いて悪鬼を追い出す行事に発展して民間にも定着していったそうです。enpitu02.gif

私どもの氏神様である藤森神社でも本日は『節分祭並追儺式』が盛大に行なわれます。

伏見区では一番規模の大きな節分祭で、太鼓・雅楽・舞楽の奉納や追儺式 、豆まきが行なわれます。追儺式は音響効果やライトなどの演出も派手で見ごたえのあるものです。

今日はとても寒いですが、是非、藤森神社の『節分祭並追儺式』にも足を運んでみて下さい。
ちなみに追儺式は 20:00からです。
あつあつの甘酒も戴けるので温まります。

さて、今回は『節分』にちなんだ「前菜八寸」の写真を紹介させていただきます。

「豆まき」をイメージしていただけるように、一口大のお料理を「枡」に盛り込んでいます。kao-a02.gif
お客様にとって、また当店にとっても、『厄や災難を追い払い、たくさんの「福」がおとずれ枡(ます)ように・・・♪』と、願いを込めた演出です。heart02.gif

どうか中のお料理はバラ撒かずに、ご賞味くださいますよう御願い致します。 笑♪♪kao07.gifkira01.gif

『 雪果 』と申します。

12月の御水物(デザート)です。kira02.gif

真っ白な雪をイメージしたムースの中から林檎が顔を覗かせています。hana-ani01.gif
これから長い冬が訪れますが、寒くて辛い冬のイメージではなく、例えば暖炉の火に当たりながら暖かい部屋の中から深く積もった雪景色を楽しんでいるような暖かな印象を持っていただけたら…という気持ちでこしらえました。yuki.gif

長い冬の間、草花も動物たちも、降り積もった雪に姿をかき消されてしまいますが、やがて訪れる春を心待ちに、静かに胸を高鳴らせていることでしょう。kao-a02.gif
真っ白なムースに埋もれた果物は、そんな春の到来を心待ちにする気持ちを表現したつもりです。

さて、このデザートですが、寒くて冷たい「雪景色」ではなく、どこか暖かさを感じて頂きたいという思いで『 雪果 』と名づけました。kira01.gif
冷たいムースですが、暖か味を感じて頂けるようなお味になっております。

全くのオリジナルレシピですので、一言で「○○○のムースです。」とは表現できないのですが、『クリームチーズ』と『ヨーグルト』をベースにして構成しました。bikkuri03.gif
味を言葉で説明するとしたら、そのどちらの味が勝つことなく、まったりとした 『クリームチーズ』の味がどこか暖か味を感じさせ、濃厚な洋風の味に成り過ぎないように、さっぱりとした『ヨーグルト』が濃厚さを抑え込んでいるという感じでしょうか。kao07.gif

林檎はブランデーの香りを効かせて薄蜜煮(コンポート)にしてあります。
色のアクセントにブルーベリーを乗せ、彩りにイチゴのソースを掛けました。futaba.gif

後、面白いところとしては、ムースの隠し味的なものでしょうか。

林檎との相性、味の繋ぎとしてムースにはシナモン少々シナモンを入れてあるのですが、それとは別にもう一つ…

粗引きの黒胡椒をしのばせています。kira02.gifkira02.gif

先ほど「暖か味のある味」と申しましたが、それは悪くいうと「ぼやけた締まりのない味」とも感じられるように思います。
それをキリッと引き締め、大人な味に引き立てくれるのが、この黒胡椒です。heart03.gif

(つたない文章で精一杯の説明をしておりますが、少しくらいはイメージしていただけてるでしょうか… 笑)kao-a20.gif

さて、当店の「御水物」は、女性のお客様にも喜んでいただけるように「デザート」と呼ぶほうがふさわしいような物です。洋菓子の技法もふんだんに使いますが、その味は極力あっさりと和食の後にも合うような物を目指して試行錯誤の中、努力しております。cake.gifkira01.gif

当店をご利用下さるお客様はやはり男性のお客様がその大半ですが、是非、女性同士の会合などにもご利用いただきたいと願っております。heart02.gif
(今風に言えば『女子会』ですね♪笑)
本当はクリスマスにカップルの食事にもご利用いただきたいと常々思っているのですが、当店は12月は25日から お節料理の準備に入りますので、お座敷での営業はクリスマスイブの12月24日までになります。tree02.gifsantabou.gif
クリスマスに限らず、奥様や彼女のお誕生日を祝うお食事としても是非『 うを友 』をご利用下さいますよう御願い致します。present04.gifheart06.gif

…おっと!kao-a17.gif
随分話がそれてしまいましたが、再びデザートの話に戻ります!f01.gif

今回のお料理は、その技法も材料も「洋」の印象が特に強い物です。
少しでも『和』の印象に近づけるため、最後に『柚子の皮』を薄蜜で煮て、その煮汁と共に薄いゼリーにして上から掛け、天にあしらえました。te03.gifkao-a04.gifkira01.gif

 

柚子の香りと共にお召し上がり下さい…。

今回はデザート『 雪果 』のご紹介でした。
つたない長文を最後まで読んで下さってありがとうございます。heart08.gif

 

 

 

 

 

「鯛かぶら」です。

今回は「焚き合せ」。
「鯛かぶら」を紹介させていただきます。 kira01.gifkira01.gif

相変わらずの長文になりますが、暇つぶしがてらにでも読んでいただければ幸いです。kao-a20.gif

さて、今の時期、京都を代表する蕪(かぶら)のお料理と言えば「鯛かぶら」。kao16.gifte03.gifbikkuri03.gif

その相性の良さは「出会い物」と言われ、皆様ご存知のように「鯛かぶら」は、その「出会い物」の中でも代表格とも言える組み合わせです。

ですが、通常の「鯛かぶら」は懐石料理の一品と言うよりは「おばんざい」に近いもの、勿論、熱々を土鍋などで出して頂く割烹店などの「鯛かぶら」は格別で、体の芯から温まる最高の一品でありますが、骨などのアラをせせって食べていただかなくてはならないようなお料理は懐石料理にはあまりふさわしくないように思います。

そこで、私ども料理人は一手間、二手間かけることによって新たな形態に変化させ、その場にふさわしいお料理に仕立てていくこともやりがいのある仕事の一つです。heart06.gif

今回は「小蕪(こかぶら)」を使い、写真のように仕立てました。

小蕪は、鯛の骨(アラ)の旨味をたっぷり抽出したお出汁で優しく炊き上げ。hana-ani01.gifhone.gifhana-ani01.gif
さらに、蕪の旨味も合わさったその煮汁で鯛の身を炊き、最後に双方を合わせ、その旨味をなじませる…という手法を執っております。

今回は鯛の身で京水菜を包み込み、さらには舌の上でチュルンと滑る舌触りを楽しんでいただきたく、吉野葛をまぶした吉野煮に仕立てました。これは舌触りだけでなく、鯛の身から煮汁の中に旨味や脂分が流出するのを防ぐ意味合いもございます。up.gif

また、小蕪はそのままでも良かったのですが、今回は遊び心から、中を少しくり抜いて「ばらの助子 」を玉締めにして射込みました。
「助子」は助惣鱈の真子ですが、昔から鯛の子の代用としてよく用いられ、味も比較的良く似ています。
今回はお客様にご賞味いただく際に、少しの驚きで楽しんでいただければ…と思い、 趣向をこらしてみました。kao-a03.gifkira01.gif

見た目がシンプルなお料理ですが、至るところに注意を払う手の込んだ一品です。

繰り返しのようになりますが、特に気を使うのが煮汁。
蕪のような繊細な持ち味を活かすにはやはり煮汁の美味さが大切です。te03.gifkira02.gif

鯛と蕪の美味さが混ざり合ったその煮汁の美味さもお楽しみいただけるように薄味で仕上げ、熱々の共地餡をたっぷり注ぎ、柚子の香りと山葵を添えて御座います。

少しでも熱い内にホクホクとお召し上がりいただきたいと、盛りつけるのも必死です♪(笑)

これからの寒い時期、温かいお料理は心まで温めてくれるような気がしますね♪ kao-a02.gifhaibisukasu01.gif

 

器は特徴のある蓋物ですが、15年ほど前に窯元に出向き、特別に作って頂いたものです。

その温かみと上品さがこのお料理と良くあっていると思います。

今回は「うを友」ならではの「鯛かぶら」を紹介させていただきました。kya-.gif

長文を最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。heart09.gif

 

秋なのに「バナナムース」?!

今回は御水物(デザート)を紹介させていただきます。

デザートは御献立の中でも特に女性のお客様を意識して考えます。
毎年なら秋には「梨」や「葡萄」、今からでしたら「ラ・フランス」や「林檎」などを良く使うのですが、今回は季節感の合わない「バナナ」を使っています。been.gifkira01.gif

そもそも、何故「バナナ」を使うに至ったか…bikkuri04.gif

実は9月の中頃に母の田舎から沢山の栗が送って来ました。
その中で形の良いものは「渋皮煮」にしたのですが、形が悪く不揃いな物も多く、最初はそれを「栗御飯」にしようと思っていました。しかし、その量はあまりに多く、「栗御飯」だけでは消費しきれそうにもなく、それならばいっそうのこと、保存の効く「栗餡」にしてしまって、デザートに…と考えたのがきっかけです。
(結局はこの料理が気に入ってしまって「栗餡」がなくなっても追加追加して、同じお客様で無い限りは今もお出ししているのですが… 笑)kao07.gif

さて、この「栗餡」を使ってどのようなデザートにするか…
いろいろと考えました。 hatena04.gif
最初は「栗」を前面に出して「栗のムース」にしようかと考えました。例えば紅茶のムースやババロアと二層にするとか…秋らしい感じがします。
しかし、何かありきたりな気がして…私としては面白味に欠けるように思い、何か無いかと考えている時に思いついたのが「バナナ」でした。kao16.gifheart05.gif

そう、この「バナナムース」の中にはブランデーで香り付けした「栗餡」を包んであるのです。
「バナナ」の変色を防ぎつつも、その「香り」を損なわないように調理するには多少の試行錯誤もございましたが、それよりも「バナナ」と「栗」の双方の味を損なわないことに特に気を使いました。te03.gif

試作、試食を重ね、少しビターな大人味に仕立てた「カラメルソース」でまとめることにしました。heart06.gif
「バナナムース」と「栗餡」だけでも充分美味しいのですが、「カラメルソース」の苦味が絡まることによって、それぞれの持ち味がより一層際立ちます。(うん!満足!笑♪)kao22.gif

当店は「御水物」を「デザート」として考え、洋菓子の技法を用いることが多いのですが、あくまで御献立の中の一品、実際の洋菓子に比べ、「和」のテイストを損なわないようにかなりあっさりと仕上げています。
お客様にお出しする献立の最後のお料理、「また来よう♪」と思っていただけるように心を込めて…

あっ、今、気が付いたのですが、写真は最後の試作の時のものでした。
申し訳ございません。
この時は、上に「ココナッツ」がトッピングしてありますが、試食するとココナッツが口に残って全く合いませんでした。

上には真っ白なものを乗せたかったので試したのですが、予想通り…kao-a20.gif

結局、最終的には「淡雪 」(メレンゲ)を上から乗せています。
赤い実は「くこの実」です。 hana-ani01.gif

 

「バナナ」という常夏の国の果物を使いつつ、しかっりと「秋」を感じていただける面白い一品に仕上がったと思います。kira02.gifkira02.gif

 

でも、もうそろそろ新メニューに変えないといけませんね…kao-a02.gifkira01.gif

 

子持ち鮎の飯蒸し。

『子持ち鮎の飯蒸し』です。kira01.gif

久々のブログになりますが、今回は「子持ち鮎の飯蒸し」を紹介させていただきます。kao06.gif

鮎は太古より日本人と深く係わりのある縁起の良い魚で、日本建国の神話にも関係のある魚です。日本書紀にも記されている故事にならい「魚」偏に「占」と書くようになったそうですが、今でも三重県のある地域では「鮎」をその年の吉凶占いに用いているそうです。

(このような閑話は長くなるのでかなり簡単に書きましたが、興味のある方は調べてみて下さい♪)kao07.gif

さて、そんな鮎は夏の定番料理ですが、今回のお料理は秋の産卵直前のお腹に真子がいっぱい詰まった雌鮎を使ったお料理です。

鮎は背開きにして、中の真子を丁寧に取り出します。
身は包丁で卸して中骨と腹骨を取り除きます。
真子や身に付いている血や汚れを落とす為、また、余分な臭みを抜くために酒を効かせた塩水に浸して綺麗にした後、身で真子を元の形に包み、結わい草で結びます。
次はこれを天火で焼き、その後に山椒の実と共にさっと煮た後、時間を置いて味を含めます。

このお料理では子持ち鮎を薄味で さっと煮て用いたいのですが、煮るだけでは白っぽく仕上がり、見た目にもお客様に生臭い印象を与えてしまいます。
ですが、一度焼いて香ばしさをプラスすることによって川魚特有の臭みも消え、見た目にも美味しく仕上がるという算段です。
しかしながら、このお料理は最終的には飯蒸しとして白蒸し(もち米)と一緒に銀餡で食していただく訳ですから、焼くだけでも良いですし、焼いてから酒蒸しにするという手もございます。
そこをあえて味をつけて煮る訳は、やはり味のハーモニーです。
このお料理が鮎の身だけなら、シンプルに焼くだけのほうが良いでしょう。しかし、子持ち鮎はその大部分を真子が占めています。少し甘味もあって山椒の実の香りも効いている方が最終的に食していただいた際に絶対美味しいと考えました。kira02.gif

(簡単に紹介するつもりが、いつものように随分と長くなってまいりました…汗)kao-a20.gif

さて、そんな「子持ち鮎の飯蒸し」ですが、「蒸し物」と言うよりは「焚合せ」に近い形でお出ししています。
主な付け合せは「冬瓜」と「焼き茄子」。
「子持ち鮎」の持ち味を損なわないように全体にあっさりとした淡白な味のものばかりでまとめましたが、淡白になりすぎないように「冬瓜」は和蘭煮にしてあります。
和蘭煮と言うのは、一度油で揚げた後に煮る技法で味にコクが出ます。
秋茄子を焼き茄子にしてますが、これもあっさりしていますが、熱々に温めると見た目以上に香ばしい香りが口の中に広がります。kya-.gifheart01.gif

薄味に山椒の効いた「子持ち鮎」、口の中でほろほろと崩れるその真子と「白むし」を隠し味程度に少しだけ味醂で甘味加えた銀餡と山葵の香りが包み込み、すこし油っ気のある熱々の「冬瓜」と 焼き茄子の香ばしい香り…
全てバラバラだった物達が、餡に絡まることによって器の中で一つのハーモニーを奏でる。
私は、このような料理が大好きです。up.gif

子持ち鮎は時期のものですから、今年はもうこの料理も 終わりですが、この秋のお気に入り一品なので紹介させていただきました。bikkuri04.gif

同じ料理を定番のように毎年繰り返すのはあまり好きではございませんので、来年はもうこの料理はしないかもしれません。
ひょっとしたら何年もしないかも…

ですが、常に新しい料理を工夫してお客様をお迎えできるようにこれからも精進いたしますので、どうか今後も宜しくお願いいたします。kira01.gifkira01.gif