月別アーカイブ: 2014年11月

「鯛かぶら」です。

今回は「焚き合せ」。
「鯛かぶら」を紹介させていただきます。 kira01.gifkira01.gif

相変わらずの長文になりますが、暇つぶしがてらにでも読んでいただければ幸いです。kao-a20.gif

さて、今の時期、京都を代表する蕪(かぶら)のお料理と言えば「鯛かぶら」。kao16.gifte03.gifbikkuri03.gif

その相性の良さは「出会い物」と言われ、皆様ご存知のように「鯛かぶら」は、その「出会い物」の中でも代表格とも言える組み合わせです。

ですが、通常の「鯛かぶら」は懐石料理の一品と言うよりは「おばんざい」に近いもの、勿論、熱々を土鍋などで出して頂く割烹店などの「鯛かぶら」は格別で、体の芯から温まる最高の一品でありますが、骨などのアラをせせって食べていただかなくてはならないようなお料理は懐石料理にはあまりふさわしくないように思います。

そこで、私ども料理人は一手間、二手間かけることによって新たな形態に変化させ、その場にふさわしいお料理に仕立てていくこともやりがいのある仕事の一つです。heart06.gif

今回は「小蕪(こかぶら)」を使い、写真のように仕立てました。

小蕪は、鯛の骨(アラ)の旨味をたっぷり抽出したお出汁で優しく炊き上げ。hana-ani01.gifhone.gifhana-ani01.gif
さらに、蕪の旨味も合わさったその煮汁で鯛の身を炊き、最後に双方を合わせ、その旨味をなじませる…という手法を執っております。

今回は鯛の身で京水菜を包み込み、さらには舌の上でチュルンと滑る舌触りを楽しんでいただきたく、吉野葛をまぶした吉野煮に仕立てました。これは舌触りだけでなく、鯛の身から煮汁の中に旨味や脂分が流出するのを防ぐ意味合いもございます。up.gif

また、小蕪はそのままでも良かったのですが、今回は遊び心から、中を少しくり抜いて「ばらの助子 」を玉締めにして射込みました。
「助子」は助惣鱈の真子ですが、昔から鯛の子の代用としてよく用いられ、味も比較的良く似ています。
今回はお客様にご賞味いただく際に、少しの驚きで楽しんでいただければ…と思い、 趣向をこらしてみました。kao-a03.gifkira01.gif

見た目がシンプルなお料理ですが、至るところに注意を払う手の込んだ一品です。

繰り返しのようになりますが、特に気を使うのが煮汁。
蕪のような繊細な持ち味を活かすにはやはり煮汁の美味さが大切です。te03.gifkira02.gif

鯛と蕪の美味さが混ざり合ったその煮汁の美味さもお楽しみいただけるように薄味で仕上げ、熱々の共地餡をたっぷり注ぎ、柚子の香りと山葵を添えて御座います。

少しでも熱い内にホクホクとお召し上がりいただきたいと、盛りつけるのも必死です♪(笑)

これからの寒い時期、温かいお料理は心まで温めてくれるような気がしますね♪ kao-a02.gifhaibisukasu01.gif

 

器は特徴のある蓋物ですが、15年ほど前に窯元に出向き、特別に作って頂いたものです。

その温かみと上品さがこのお料理と良くあっていると思います。

今回は「うを友」ならではの「鯛かぶら」を紹介させていただきました。kya-.gif

長文を最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。heart09.gif

 

「小蕪(こかぶら)」です。

「小蕪」です。
季節の食材ということで写真に収めました。kira01.gif

真っ白でコロコロしていて可愛らしいです。 kao-a02.gifheart06.gif

秋なのに「バナナムース」?!

今回は御水物(デザート)を紹介させていただきます。

デザートは御献立の中でも特に女性のお客様を意識して考えます。
毎年なら秋には「梨」や「葡萄」、今からでしたら「ラ・フランス」や「林檎」などを良く使うのですが、今回は季節感の合わない「バナナ」を使っています。been.gifkira01.gif

そもそも、何故「バナナ」を使うに至ったか…bikkuri04.gif

実は9月の中頃に母の田舎から沢山の栗が送って来ました。
その中で形の良いものは「渋皮煮」にしたのですが、形が悪く不揃いな物も多く、最初はそれを「栗御飯」にしようと思っていました。しかし、その量はあまりに多く、「栗御飯」だけでは消費しきれそうにもなく、それならばいっそうのこと、保存の効く「栗餡」にしてしまって、デザートに…と考えたのがきっかけです。
(結局はこの料理が気に入ってしまって「栗餡」がなくなっても追加追加して、同じお客様で無い限りは今もお出ししているのですが… 笑)kao07.gif

さて、この「栗餡」を使ってどのようなデザートにするか…
いろいろと考えました。 hatena04.gif
最初は「栗」を前面に出して「栗のムース」にしようかと考えました。例えば紅茶のムースやババロアと二層にするとか…秋らしい感じがします。
しかし、何かありきたりな気がして…私としては面白味に欠けるように思い、何か無いかと考えている時に思いついたのが「バナナ」でした。kao16.gifheart05.gif

そう、この「バナナムース」の中にはブランデーで香り付けした「栗餡」を包んであるのです。
「バナナ」の変色を防ぎつつも、その「香り」を損なわないように調理するには多少の試行錯誤もございましたが、それよりも「バナナ」と「栗」の双方の味を損なわないことに特に気を使いました。te03.gif

試作、試食を重ね、少しビターな大人味に仕立てた「カラメルソース」でまとめることにしました。heart06.gif
「バナナムース」と「栗餡」だけでも充分美味しいのですが、「カラメルソース」の苦味が絡まることによって、それぞれの持ち味がより一層際立ちます。(うん!満足!笑♪)kao22.gif

当店は「御水物」を「デザート」として考え、洋菓子の技法を用いることが多いのですが、あくまで御献立の中の一品、実際の洋菓子に比べ、「和」のテイストを損なわないようにかなりあっさりと仕上げています。
お客様にお出しする献立の最後のお料理、「また来よう♪」と思っていただけるように心を込めて…

あっ、今、気が付いたのですが、写真は最後の試作の時のものでした。
申し訳ございません。
この時は、上に「ココナッツ」がトッピングしてありますが、試食するとココナッツが口に残って全く合いませんでした。

上には真っ白なものを乗せたかったので試したのですが、予想通り…kao-a20.gif

結局、最終的には「淡雪 」(メレンゲ)を上から乗せています。
赤い実は「くこの実」です。 hana-ani01.gif

 

「バナナ」という常夏の国の果物を使いつつ、しかっりと「秋」を感じていただける面白い一品に仕上がったと思います。kira02.gifkira02.gif

 

でも、もうそろそろ新メニューに変えないといけませんね…kao-a02.gifkira01.gif

 

子持ち鮎の飯蒸し。

『子持ち鮎の飯蒸し』です。kira01.gif

久々のブログになりますが、今回は「子持ち鮎の飯蒸し」を紹介させていただきます。kao06.gif

鮎は太古より日本人と深く係わりのある縁起の良い魚で、日本建国の神話にも関係のある魚です。日本書紀にも記されている故事にならい「魚」偏に「占」と書くようになったそうですが、今でも三重県のある地域では「鮎」をその年の吉凶占いに用いているそうです。

(このような閑話は長くなるのでかなり簡単に書きましたが、興味のある方は調べてみて下さい♪)kao07.gif

さて、そんな鮎は夏の定番料理ですが、今回のお料理は秋の産卵直前のお腹に真子がいっぱい詰まった雌鮎を使ったお料理です。

鮎は背開きにして、中の真子を丁寧に取り出します。
身は包丁で卸して中骨と腹骨を取り除きます。
真子や身に付いている血や汚れを落とす為、また、余分な臭みを抜くために酒を効かせた塩水に浸して綺麗にした後、身で真子を元の形に包み、結わい草で結びます。
次はこれを天火で焼き、その後に山椒の実と共にさっと煮た後、時間を置いて味を含めます。

このお料理では子持ち鮎を薄味で さっと煮て用いたいのですが、煮るだけでは白っぽく仕上がり、見た目にもお客様に生臭い印象を与えてしまいます。
ですが、一度焼いて香ばしさをプラスすることによって川魚特有の臭みも消え、見た目にも美味しく仕上がるという算段です。
しかしながら、このお料理は最終的には飯蒸しとして白蒸し(もち米)と一緒に銀餡で食していただく訳ですから、焼くだけでも良いですし、焼いてから酒蒸しにするという手もございます。
そこをあえて味をつけて煮る訳は、やはり味のハーモニーです。
このお料理が鮎の身だけなら、シンプルに焼くだけのほうが良いでしょう。しかし、子持ち鮎はその大部分を真子が占めています。少し甘味もあって山椒の実の香りも効いている方が最終的に食していただいた際に絶対美味しいと考えました。kira02.gif

(簡単に紹介するつもりが、いつものように随分と長くなってまいりました…汗)kao-a20.gif

さて、そんな「子持ち鮎の飯蒸し」ですが、「蒸し物」と言うよりは「焚合せ」に近い形でお出ししています。
主な付け合せは「冬瓜」と「焼き茄子」。
「子持ち鮎」の持ち味を損なわないように全体にあっさりとした淡白な味のものばかりでまとめましたが、淡白になりすぎないように「冬瓜」は和蘭煮にしてあります。
和蘭煮と言うのは、一度油で揚げた後に煮る技法で味にコクが出ます。
秋茄子を焼き茄子にしてますが、これもあっさりしていますが、熱々に温めると見た目以上に香ばしい香りが口の中に広がります。kya-.gifheart01.gif

薄味に山椒の効いた「子持ち鮎」、口の中でほろほろと崩れるその真子と「白むし」を隠し味程度に少しだけ味醂で甘味加えた銀餡と山葵の香りが包み込み、すこし油っ気のある熱々の「冬瓜」と 焼き茄子の香ばしい香り…
全てバラバラだった物達が、餡に絡まることによって器の中で一つのハーモニーを奏でる。
私は、このような料理が大好きです。up.gif

子持ち鮎は時期のものですから、今年はもうこの料理も 終わりですが、この秋のお気に入り一品なので紹介させていただきました。bikkuri04.gif

同じ料理を定番のように毎年繰り返すのはあまり好きではございませんので、来年はもうこの料理はしないかもしれません。
ひょっとしたら何年もしないかも…

ですが、常に新しい料理を工夫してお客様をお迎えできるようにこれからも精進いたしますので、どうか今後も宜しくお願いいたします。kira01.gifkira01.gif