日別アーカイブ: 2013年11月1日

揚げ物。

今回は揚げ物を紹介させていただきます。

鮑(あわび)の香り揚げです。

鮑は夏が旬とされていますが、小ぶりながらも上質のものを入荷しましたので、柔らかく煮た後に香り揚げにいたしました。

日頃なら鮑のように高価なものは「生」で使うか、「柔らか煮」にするか・・・で、揚げ物に使うことは滅多に無いのですが、常からご贔屓いただいているお客様のリクエストでこのように調理しました。

「鮑」はやはり大昔から高価なものだったようですが、その美味しさだけではなく、縁起物としても重宝されてきました。古代中国では「不老長寿」や「延命 若返り」の薬的な食べ物と考えられていたそうです。

今年、20年に一度の式年遷宮が行われた伊勢神宮も「鮑」とは深い係わりがありますね。以前、テレビで「のし鮑」を献上する儀式の準備する様子を見たことがあります。ちょっと調べてみたのですが、6月と12月に行われる月次祭(つきなみさい)と10月の神嘗祭(かんなめさい)とありました。

「のし鮑」というのは鮑を薄く長く剥いて伸ばして乾燥させたものです。長期の保存がきく上に栄養価も高く、また「伸ばす」ということからも贈る相手の「長寿延命」を願うとされ、武家の間では出陣の際の贈り物として好まれたそうです。

そうそう、贈り物につける「のし紙」や、お祝いの「のし袋」「のし(熨斗)」って、この「のし鮑(熨斗鮑)」だってことご存知ですか?「のし(熨斗)」って小さな色紙を折りたたんだものの中に黄色っぽいものが包んでありますよね。あれが「のし鮑(熨斗鮑)」なんです。時代と共に簡略化されて模造品や印刷になったのです。

またまたテレビで見たのですが、太古の昔は献上物や贈答品には海産物を添える慣わしがあり、その最高級なものが「鮑」だったという話もあるようです。

今回は「鮑」にちなんでのお話になりましたが、このように食材一つ取っても、器を取っても、日本料理には色々な逸話や歴史があり、私たち料理人はそれにちなんでお料理をお出しすることも多々あります。お料理の中に、見えない物語がひそんでいる訳です。

また、昔からの伝統料理には「能」の登場人物や物語から料理名がついているものも多く、日本の伝統文化すべてと密接な繋がりがあります。

これも日本料理ならではの興味深い点であり、お料理の楽しみ方の一つでしょう。

私もまだまだ勉強しなければならないことが山積みです!kao17.gif

でも、少しずつ楽しみながら頑張ります♪kao-a01.gifte01.gif

 

(今回は随分真面目な文章になりましたkao07.gif